2019年は亥年。
イノシシにちなんだ和歌・俳句を集めてみました。
🐗和泉式部
かるもかき 臥す猪の床の いを安み さこそ寝ざらめ かからずもがな (後拾遺和歌集 巻十四 恋四 821)
[歌意]
枯草をかき集めて寝床をつくるイノシシは、居心地がよくて何日も安眠するというけれど、
そんな風に熟睡できないまでも、このように恋に思い悩まずほんの少しでも眠れたらよいのに……。
*猪を題材に「恋」の歌を詠むなんて、驚きでした👀
🐗吉田兼好『徒然草』第14段
和歌こそ、なほをかしきものなれ。
あやしのしず・山がつのしわざも、言ひ出でつればおもしろく、
おそろしき猪のししも、「ふす猪の床(ふすいのとこ)」と言へば、やさしくなりぬ。
[現代語訳]
和歌というのは、やはり情趣・風情がある。
身分の低い下賎な者・山に住む木こりの所業も、歌にすればおもしろくて、
恐ろしい猪でさえも、『臥猪の床』と言えば優しい印象になってしまう。
(凶暴な野生の獣も、萩や萱など優しげな植物を寝床にしているのだから。)
🐗俳句
〇猪も ともに吹かるる 野分かな (松尾芭蕉)
〇猪の 床にも入るや きりぎりす (松尾芭蕉)
〇風吹くや 猪(しし)の寝顔の 欲げなき (小林一茶)
〇猪や臥せし 鹿や乱せし 萩の花 (正岡子規)
〇落葉あびて 山くだりゆく 猪に逢ふ (加藤楸邨)
*秋の草や、秋に吹く強い風(野分)と取り合わされるのは、まさに花札の「萩に猪」のイメージ。
そして、前述の「臥す猪の床」からの「寝顔」! [YT]