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身近な鳥❹ホオジロ(頬白)

裾花川沿いを自転車で走っていると、ワンマンライブのように高らかな鳥の歌声が聞こえてきました。
きょろきょろ辺りを見回すと、木のてっぺんに、胸を張り、嘴を大きく開けたホオジロ(頬白)が見つかりました。
澄んださえずりは「一筆啓上仕候(イッピツケイジョウツカマツリソウロウ)」とか「源平つつじ白つつじ」などと聞きなされます。

諏訪市出身の歌人・島津赤彦は、

◌高槻の 木末(こずえ)にありて 頬白の さへつる春と なりにけるかも
【歌意】高いケヤキの木のてっぺんでホオジロが囀る春になったことだ

と、ホオジロの囀りをとらえて春の喜びを詠んでいます。

👆写真は白馬五竜高山植物園で撮影。右イラストは「パブリックドメインQ」より

数年前、妹と牟礼宿から野尻宿まで北国街道を約10km歩いた際、野尻湖公民館で足を休めると「ほほじろの声」という詩碑がありました。
夏の盛りを過ぎた野尻湖畔は他に訪れる人もなく、静けさに包まれていたこともあり、この詩の孤独・静寂は深く印象に残りました。
『銀の匙』で知られる作家・中勘助が、明治44年(1911)秋、27歳のときに静養のため野尻湖を訪れ、琵琶島(弁天島)の安養寺に仮寓、大正13年(1924)に当時を懐かしんで「ほほじろの声」は作られたそうです。[YT]

◌ほほじろの声 中勘助

ほほじろの声きけば
山里ぞなつかしき
遠き昔になりぬ
ひとり湖のほとりにさすらひて
この鳥の歌をききしとき
ああひとりなりき
ひとりなり
ひとりにてあらまし
とこしへにひとりなるこそよけれ
風ふきて松の花けぶるわが庵に
ほほじろの歌をききつつ
いざやわれはまどろまん
ひとりにて

2019年03月18日